「研究テーマ」

 現代社会の束縛や自分に絡んでくる様々な束縛から逃れたい葛藤(逃れたいが、逃れることが出来ない。それは、自分は自分であり、男であり、日本人であり、現代の日本社会の一員である等、ごく普通の事である。そんな、逃れることが出来ないと解っていてそれでもあえて逃れたいが逃れられない自分の中では矛盾したような葛藤)に伴う自己精神の痛みや苦しみを吐き出したい感情を表現したい。それは、日常における漠然とした不安や恐怖の感情でもある。そんな人間の無意識にあるネガティブな精神をあえて意識するには、非日常的な意識を感じなければならない。そんな意識をいかにビジュアルとして目に入ってくるイメージの強さとして表現出来るか挑戦し、自分の意識に埋没している可能性を見てみたい。

 意識として、身体に深く関わってくるものや自分の身近にあるものをモティーフとして選んでいる。それは自分に関わる人間としての日常の動作であり、人間そのものの人体の一部であり別の生命であり、自然物でもある。それら様々なイメージをビジュアルとして考え、ビジュアルソース(雑誌、写真、ビデオ等)からいかに自分の絵画表現が出来るか挑戦したい。

 さらに絵画表現を追求するのにあたり、今まで自分が専門に勉強をしてきた事により表現しやすい理由からも油彩画にこだわって研究をしている。それに伴って地塗りを研究することは、表現の基盤を知ることであり、作品制作上でも極めて有意義である。特に興味を引かれたのが、ルーベンスを代表とする第2フランドルの技法である。同じ油性の下地を使っていながら、フランドル技法の特徴も残している。地塗りには、比較的明るいグレーや黄金オーカー系が使われ、光の方向へも影の方向へも自在に描き進めるような下地になっていた。

興味を持った理由として、エマルジョン地の特長による所が大きい。例えば、「半吸収性地である、水性絵具や油性絵具の両方に対応できる、柔軟性がありキャンバスにも塗布できる、処方を変えることにより好みの吸収性が得られる、発色が綺麗で絵画の保存性が強い、」等が上げられる。それは自分の作品のテーマでもある、ビジュアルとしての絵画表現を追求していくにつれ表現の基礎を知ることにより、自分の絵画表現に絵画としての説得力や質を出していきたい。